夜遊び

間一髪!池袋の“ぼったくりキャバクラ”から脱出してきた話

東京アップデート編集部

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先週の土曜日の事。

世間は休日の中、俺は仕事で夜中まで残業し、気付くと帰る途中の池袋で終電を逃していた。

タクシーを使って家に帰るくらいなら、明日は休みだし、せっかくなので漫画喫茶にでも泊まって少し遊ぼうと思い立った俺は、嫁に終電を逃した事情を伝え、池袋駅の西口を出た。

キャバクラどうですか?おっパブ、ソープもありますよ!

池袋の西口エリアには友人とちょくちょく来ていたが、1人だと治安の悪さを痛感する。

風俗・キャバクラ・飲み屋などのキャッチがそこら中に立っていて、少し歩くと声を掛けられ、それを無視したり断ったりして振り切ると、また新しいキャッチに絡まれる。

キャッチに声を掛けられること自体は慣れているし、友人と一緒にいる時なんかは暇潰しでキャッチと話したりもするのだが、1人で歩くとこうも心細いものなのか。

とりあえず、暑さと仕事の汗でベタついたこの身体を、シャワーにでも入ってスッキリさせたい。

もちろん漫画喫茶に行けばシャワーはあるのだが、ここは池袋。

女の子と一緒にシャワーに入れば下半身もスッキリするではないか!

そんなやましい気持ちを抱えながらも薄い財布の事を考え、『やっぱり漫喫のシャワーでいいか…』と心揺れながらフラフラ歩いていると、またキャッチが声を掛けてきた。

少し小太りな20代前半くらいのキャッチは、爽やかな笑顔で

「キャバクラどうですか?おっパブ、ソープもありますよ!」

と俺の揺れる気持ちを煽ってくる。

(くっ…行きたい…。だが、我慢、我慢だ…)

「いや、漫画喫茶を探してるんで…」

キャッチは「なんで漫画喫茶なんですか?泊まるんですか?」と間髪入れずに聞いてくる。

そしてすかさず俺の左手に付いている結婚指輪を見つけ、

「あれ、ご結婚されてるんですか?なのに漫画喫茶ですか?」

とグイグイ押してくるのだが、かなりの低姿勢っぷりがあまり嫌な気持ちを感じさせない。

なかなかやり手だ。

「そうですね…終電逃しちゃって…」

ついつい相手をしてしまうと、『食い付いた!』とばかりに

「じゃあわざわざ漫喫なんかに泊まらないでホテルに泊まれば良いじゃないですか!今日メチャクチャ暇なんでかなり安くできますよ!」

と変わらない笑顔で営業をしてきた。

(安くできるのか…凄く気になる…。だがここで話しを聞いてしまってはダメだ…)

「…全然お金ないんで…」

「いやいやいや!漫喫泊まるのだってお金かかるじゃないですか!それと大して変わらないですよ!ホント安くしますんで!」

「いや…1万払うのもキツいんで…」

「でもホテルでゆっくり寝たくないですか?ホテル代も入れて1万ぐらいだったらどうです?」

(…本当はホテルでゆっくり寝たい!!)

「いや…その…」

正直、もうこの時点で半分以上キャッチに心が傾いていた。

なんせ最初は2万くらい払ってホテヘルにでも行こうかと思っていたのだから。

それを見透かしたかのようにキャッチが畳み掛けてくる。

「分かりました!ご結婚されているってことですし僕も頑張ります!40分で良ければホテル代込みで12,000円でなんとかOKさせますんで!それならどうでしょうか!?」

(いやいやいやホテル代込みで12,000円はないだろ…。とんでもないババアが出て来るんじゃ…?)

そう疑いながらも、ベッドで寝れるならそれでいいと思い始めていた。

1つだけ守って頂きたいことがあるんです!

「ただ、正直この金額は特別なんで、1つだけ守って頂きたいことがあるんです!」

(な、なんだ…やっぱり変な条件があるのか?)

俺が身構えると、

「まず一旦、お店に行ってもらうんですけど、その時に他のお客さんがいるかもしれないので、その場合は必ず、必ず60分22,000円を払っていることにしといて下さい!これだけは必ず守って下さい!お願いします!」

(なんだ、そんなことか)

こう安心してしまった時点で、俺はキャッチの術中にハマっていたのだろう。

いや…もっと前から、このキャッチの人懐っこい笑顔と軽快な喋りに、俺はすっかりやられてしまっていたのだ。

「あぁ…じゃあ…12,000円なら…」

そう了承するや否や、キャッチは「交渉しますので」と言って携帯で店に電話を掛け始めた。

「お願いします!今日本当にお客さん全然いなくて、ご結婚されているみたいで、そこをなんとか、どうにかお願いします!」

必死に電話先の相手に頼み込み、どうにか了承を得たという感じで「大丈夫です!なんとかOK取りました!」と俺に笑顔を向け、「じゃあこちらです」と言って店へと案内する。

その道中も、

「結婚ってどうですか?良いもんですか?実は僕も来月結婚予定でして…」

と話を振ってきて、結婚の話やキャッチの彼女との馴れ初めなど、2人で盛り上がりながら店へと向かった。

俺は『なんて気さくなキャッチなんだろう』とノリノリで話していた。

この後ボッタクリに遭うわけだから、思い出すだけでも恥ずかしい。

歩くこと数分、トキワ通り沿いにあるビルへと案内され、キャッチと共に4階まで行くと、エレベーターを降りたところで店のドアから男性店員が1人出てきた。

「すみません、他のお客さんに金額バレちゃうとマズいのでここでお支払いをお願いします」

そうキャッチに言われ、12,000円をその場で支払い、キャッチと別れて店内へ入った。

嫁には絶対にバレるわけにはいかない

ドアを抜けて店内へと入った瞬間、明らかにおかしいことに気付く。

一番奥にあるソファーへ案内されたのだが、店の中は見るからにキャバクラの内装なのだ。

(しまった…やられた…)

そう思いながらも笑顔の店員を見て、『もしかしたら…』とスケベ根性を出してソファーに座ってしまった自分が悲しい。

ソファーに座ると、すぐにガリガリの女がやって来て俺の隣に座り、「お飲み物はどうされますかぁ?」と聞いてきた。

30代後半くらいのその女は、痩せ細った汚い手を俺の太腿に乗せながらオシボリを渡してくる。

これはマズイと思い、慌てて男性店員を呼ぼうとするが、店員達はこちらに全く気付かないといった態度で、談笑をしながら完全に無視を決め込んでいる。

小狭な店内を見回すと、立ちながら話をしている3人の男性店員と、ソファーで女を左右に座らせて飲んでいる男が1人。

だがこの男、店内での態度を見るに、とても客とは思えない。

こうなったらもう自分からさっさと店を出なければと思い、席を立ってドアへ向かおうとすると、さっきまで全く気付かないような態度をしていた店員が急に俺の前に立ち、

「どうしました?」

と一言。

「キャバクラのつもりで来たわけじゃないからもう店を出たい」

「まだ来たばかりじゃないですか。カードでもお支払いは出来ますからゆっくりしていって下さいよ」

言葉は丁寧だが、非常に高圧的な態度で店に残るよう促してくる。

『さぁ早くソファーに座り直せ』とばかりに。

俺は身長が180cm以上あり、一般男性よりは大柄な方だが、そんな俺よりも一回り大きく、幾つもの修羅場をくぐってきたような強面な店員が目の前に立ち、さらに2人の店員が俺の左右に立った。

完全に囲まれている状態だ。

色々な事が頭をよぎったが、ここで揉めて大事になったら嫁にバレる可能性がある。

家に帰らずに風俗へ行こうとしてボッタクられたなんて、絶対にバレるわけにはいかない。

かと言って、これ以上お金をむしり取られるのも非常に困る。

俺はすでに払ってしまった12,000円は諦めることにして、どうにか店を出ようと強気の姿勢で店員にその旨を伝えるが、店員も全く引かずに滞在させようとする。

帰る、帰るな、帰る、帰るなの押し問答を何度か繰り返し、ようやく店員が根気負け。

「そんなに帰りたいなら勝手に帰れば?」との言葉と共にサッと身体を動かすと、出口までの通路が開かれた。

最後の方は店員の態度も随分悪くなっていたが、俺は最後まで強気な態度を取り、店を出てエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターのドアが閉じるまでは内心ドキドキしていた。

エレベーターが1階に着き、建物を出るところで近くに立っていた男に呼び止められた。

「あっ、もしかしてヤラれちゃいました…?」

話を聞くと、彼はデリヘル送迎車の運転手で、いつもこの建物の前で待機しているとのこと。

これまで、この店からボッタくられて沈んだ顔で出て来る人達を何人も見てきたらしい。

俺のことも店に入る時から見ていて、『もしかして…』と思っていたら案の定…だそうだ。

「でも、こんな早く店から出てきた人初めてですよ。皆さん結構ガッツリお金取られて出てくるみたいなんで…」

よく分からない慰めの言葉を貰い、情けないやら恥ずかしいやら、複雑な気持ちのまま俺は夜の街へと引き返した。

まとめ

まとめ(シュウジ)

自分は今回初めて「ボッタクリ」に遭いましたが、最後の送迎の運転手と少し立ち話をしたところ、最近の池袋ではボッタクリ被害が非常に増えているそうです。

色々な勢力があるらしく、「稼ぐために新宿から池袋に来ている連中」だと言っていました。

自分なりに少し調べてみましたが、ボッタクリは警察としても民事不介入なので、相手にしてもらえないことが多いみたいですね。

弱気な態度だとこちらが折れるまで延々と押し問答が続いたり、店に居続けさせられたりするそうです。

「カードでも支払えるから」の言葉は今思い出すと震えますね。

限度額まで搾り取ろうという考えなのでしょうか。

自分のように、キャッチの甘い言葉を鵜呑みにする愚行を犯さないのはもちろんですが、もし万が一ボッタクリに遭った際には、出来る限り強気に対応して頑張って下さい。

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