7月5日の夕刻、いつもお世話になっているクライアントからメールが届いた。
Mさん「土曜日の件ですが、私が借りている事務所にて朝までコース朝食付きはいかがでしょうか?ちなみに川越には『JKカフェ』があるそうです」
このメールが始まりだった。
“JKカフェ”という言葉が強く頭の中に残る。
俺は軽度のロリコンであり、JCやJKが大好きな男だ。
10代という限られた時間を謳歌する彼女たちは、何もかもが輝いている。
そんなJKたちが接客してくれる店がある…というのだ。
「カフェ」と言えば喫茶店をイメージするが、どうにもコーヒーを飲んで帰るだけでは終わらなさそうだ。
「潜入しちゃいますか(笑)」
かくして俺とMさんは、お互いに初となる『JKカフェ』への潜入取材を試みたのだった。
いざ川越へ

Mさんと会う当日。
俺は予め調べておいた路線情報に目を向けながら、電車へ乗り込んだ。
最寄りの八王子みなみ駅から川越駅までは、1時間20分ほどかかる。
電車はあまり好きではないのに、さらに距離もあるときた。
いつもならiPodのイヤホンを耳にねじ込んで寝てしまうのだが、その日は不思議とおっくうではなかった。
その理由はすぐに分かった。
『JKカフェに行ける』という高揚感が、苦を楽に変えたに違いなかった。
電車内での時間の短さが、より一層それを実感させてくれる。
俺は午後8時に川越駅に到着した。
川越は以前に何度か行ったことはあるが、それから3年ほどの月日が経過していた。
もう夏だ、とても暑い。
自宅に籠もって原稿ばかり書いている俺は、汗でじっとり濡れたTシャツをバサバサとしながら歩く。
?「江川さん、どうも!」
聞き覚えのある声が俺の耳に入る。
取り決めた待ち合わせ場所では、既にMさんが待ってくれていた。
「遅れてすみませんでした!」
電車を1本乗り過ごし、少々遅れてしまった俺の口からは、真っ先にお詫びの言葉が出る。
Mさん「いえいえ、大丈夫ですよ!それじゃあ早速…行きましょうか(笑)」
「そうですね、凄く楽しみです(笑)」
そして俺とMさんは歩き出した。
足止め
夜の川越は人通りが多くなかった。
「こっちです」
Mさんに先導されながら、大通りから裏路地へと入っていく。

駅からそれほど歩くことなく辿り着いた場所は、1階で営業する飲食店の明かりが眩しい雑居ビルだった。
「このビルの3階ですね…やってるかな?」
Mさんはそう言って上方を指で示した。
その先に目をやると、『●●●』と書かれた窓が見える。
店内の照明かカーテンの色かは分からないが、長方形の窓はピンク色の妖しい光を放っていた。
雑居ビルの入り口前に移動する。
明るい外看板は、営業中であることを表していた。
「営業してるみたいですね。それじゃあ行きますか!」
雑居ビルに入ると、すぐ左手に階段があった。
俺が先行して、3階を目指し薄暗い階段をコツコツと上っていく。
「…あれ?」
目の前に現れた光景に、俺はふいに声を出してしまう。
そこには看板やダンボールなどが、胸の高さまでバリケードのごとく置かれていたからだ。
まるで、階段を使う者の進入を拒否するかのようである。
「これって入れなくないですか?」
Mさん「そうですね…もう閉まっちゃったのかな?」
が、その疑問はすぐに消える。
バリケードの奥に見える入り口からは光がこぼれ、何よりも女の子と客らしき男の話し声が聞こえてくるからだ。
「…やってるみたいですね」
Mさん「もしかして貸切とかですかね?」
「う~ん…どうなんでしょうね」
バリケードの上を抜けることは可能だが、そこまでして入るのは気が引ける…と言うか必死過ぎる(笑)
「仕方ない、一度降りましょうか」
俺がそう提案し、2人で階段を降りていく。
意気込んで入ったものの、出鼻を挫かれる展開となった。
雑居ビルの入り口前に戻り、即席の作戦会議を開く。
「階段以外に3階行く方法ありましたっけ?」
Mさん「エレベーターは見当たらないですしね」
「う~ん…JKカフェ楽しみにしてたのになぁ」
Mさん「どうしましょうかね?」
「今回は諦めて、キャバクラでも行きましょうか」
Mさん「残念ですけど、仕方ないですもんね」
結局『JKカフェ』の潜入取材を諦め、キャバクラへ切り替えることにしたのだった。
盲点
少しばかり肩を落としつつ、元来た道を戻ろうと向きを変える。
その視線の先には、40代くらいの男性がこちらへと歩いてくる姿があった。
何気なく目で追うと、その男性は真っ直ぐに雑居ビルへ入っていく。
「もしかしてあの人、JKカフェに行くんじゃないですか?」
Mさん「かもしれませんね…あっ」
雑居ビルの入り口奥の暗闇では、『△』の記号が光っていた。
「エレベーターあったんですね…」
Mさん「暗くて全然気付きませんでした(笑)」
「僕もです(笑)」
男性が乗ってドアが閉まったことを確認すると、俺とMさんはすぐにその前に立つ。
エレベーターが到着する階数を見るためだ。
「…3階で止まりましたね」
Mさん「完全にJKカフェですね(笑)」
確信を抱いた俺とMさんは、エレベーターへと乗り込む。
そして迷わず『3』のボタンと、カメラの電源スイッチを押した。
潜入
エレベーターが停止し、ドアが開いた。
それと同時に侵入してきたのは、階段で3階に上った際に聞いた男女の笑い声。
入り口へと続く短い通路には、何の障害物も無かった。
「『階段は使うな』ってことですかね(笑)」
Mさん「そうかもしれないですね(笑)」
気を引き締めて、入り口へ歩を進める。
JKカフェに足を踏み入れると、その空間は現れた。
ピンクよりも赤に近い照明が輝き、逆U字型に配置された回転式の黒いイスとカウンターが、ところどころ光を受けてぼんやりとした模様を描く。
店内には数人の男性がおり、女の子との会話を楽しんでいる。
入り口で会った40代くらいの男性の前には、ビールが置かれていた。
だが今は土曜日の20時30分、この状況はどう考えても客の入りが少ない。
(何でこんなに客がいないんだ?何か理由があるのか?)
もしかすると、キャストたちが本物のJKではないのかもしれない。
「JK」という冠名を付けているとはいえ、『女の子が18歳以上だった』という“偽JK店”の話も耳にする。
いずれにしろ、実際に接客してもらえば分かる話だ。
店内ではYシャツ姿の女の子たちが、カウンター内をせわしなく動き回っている。
それを目で追っていると、空いた席がより際立って見えた。
とにもかくにも、俺とMさんは店内左奥のイスに座る。
待つこと数分、俺たちの前に1人の女の子がやって来た。
いよいよ接客が始まるかと思いきや、その娘はカウンターの下を何やらゴソゴソし始める。
後に続いて、今度は少し大人びた女の子がやって来る。
?「最初に料金システムを説明していいですか?」
その娘はテーブルのメニューを指差しながら、少々つたない言葉で話し始めた。
?「ウチは40分2,100円です。サービス料が10%付きます。で、飲み放題なんですけど、自動延長制になってます。だから5分前にお声かけしたほうがいいですか?」
「あ、お声かけお願いしていいですか」
?「あ、わかりました~」
付け加えると、この店は夕方から夜が『JKカフェ』、夜から早朝にかけては『ガールズバー』へと変貌を遂げる。
料金説明を終えると、おもむろに簡単な自己紹介が始まった。
T「Tです、よろしくお願いしま~す」
カウンター下をゴソゴソしていた女の子も、顔を上げて名前を教えてくれた。
M「Mです、よろしくお願いします」
「あぁ、お願いします」
いよいよ、ここからが『JKカフェ』というワケだ。
M・Tペア
最初に付いた女の子たちは、MちゃんとTちゃんの2人だった。
彼女たちを見ていると、先ほどの“偽JK”の疑念は脳内から薄れていく。
Tちゃんは大人びているものの、間延びした声と話し方は10代を感じさせる。
Mちゃんに関して言えば、声と顔付きが幼く、完全に18歳以下である。
そして、2人とも可愛いときた。
確認のため、それとなく年齢を聞いてみることにした。
「現役JKってこと?」
M「現役です、全員現役です」
「いくつ?」
M「●●です」
「マジで!?」
思わず、驚きの声を上げてしまう。
間髪入れず、Tちゃんも年齢を口にする。
T「自分も●●です」
「マジで!!??」
再び、間の抜けた声を上げてしまう。
Mちゃんは、八重歯をチラリと見せながら笑っている。
『JKカフェ』は初めてということもあるが、驚きの表情を隠せなかった。
彼女たちは、予想以上の“JK"だったからだ。
M「自分今日初めてです」
「マジで?」
M「はい」
『マジで』が止まらない…と言うより俺の口癖によるものだが(笑)
T「で、自分は3回目です」
先ほどゴソゴソしていたMちゃんは、初日のために間が持たなかったのかもしれない。
T「よくこういうとこ来るんですか?」
「こういうとこメチャメチャ行く」
2人から同時に、「あ~」という声が漏れる。
もしかすると、俺の身なりがそんな風に見えるのだろうか。
「いつもはキャバクラとかそこらへん行くけど、JKカフェは初めて来た」
M「へぇ~」
2人ともに働いてから日が浅いためか、それほど話しかけてこない。
情報を得なくては意味がないため、無い頭をフル回転させて話題を振りまくる。
「学校どう?」
M「つまんないです」
「なんで?」
M「みんなマジメっ系なんで、話が合わないです」
「性格合わないんだ。Tちゃんは学校楽しい?」
T「楽しい」
「いいじゃん学校楽しいなら」
M「いいなぁ~」
Mちゃんはそう言って頬を膨らませた。
高校生活の充実度に関わらず、『JKカフェ』で働く理由は何だろうか。
刺激や仕事への好奇心など様々な理由はあるだろうが、最終的な目的はやはり金しかない。
「テストは?」
M「終わりました」
T「まだなんですよ」
「今Mちゃん何テスト?」
M「期末テストです」
「あ~期末テストか」
T「中間と期末の意味ってなんですか?」
唐突にTちゃんが質問する。
M「中間は真ん中だから『中間』、期末は一学期とかの末だから『期末』だよ」
T「あぁ~!」
「他に何があるんだよ(笑)」
Tちゃんは天然なのか狙っているのか分からないが、JKらしい一面を見せた。
M「お兄ちゃんが先に出て、弟が何分後に追いかけるみたいなね~(笑)」
「あるある(笑)」
ふと、俺の高校時代を思い出してしまう。
いつもテスト勉強は徹夜になってしまい、目を赤くしながらテストを受けていたっけ。
M・T「じゃあ…ありがとうございました!」
もう交代の時間になったようだ。
20分程度とはいえ、彼女たちと話しているとあっという間に時間が経つ。
高校生活がフラッシュバックし、どこか懐かしさを感じられるのだ。
その余韻に浸りながら、俺とMさんは2人の後ろ姿を見送った。
X・Hペア
「本物でしたね…」
Mさん「●●歳とは驚きましたよ(笑)」
「本当ですよね(笑)」
Mさんと感動を共有しつつ、程よく冷えたビールを口に運ぶ。
そうしているうちに、新たに2人の女の子がカウンターの前に立った。
X「よろしくお願いします~」(源氏名を忘れてしまったためXとする)
H「よろしくです~」
次は明朗快活なXちゃんと、眼鏡っ娘のHちゃんのペアだった。
2人とも喋り方がほわほわしている。
Xちゃんは今どきのJKという印象。
Hちゃんに関しては、なぜJKカフェで働いているのかが分からない。
完全なる主観だが、人と話すことは苦手な印象を受けたからだ。
基本的にXちゃんはよく話しよく笑う、それなりに話題も振ってくれる。
Hちゃんはそれほど会話に参加せず、Xちゃんのサポート役という感じだった。
以下は誕生日話の流れから。
「Hちゃん誕生日いつ?」
H「5日5日です」
「ゴーゴー?」
H「はい、こどもの日です(笑)」
「あっ、そっか!」
「ウチの妹ね~、1月11。イチイチイチ~(笑)」
「ゾロ目多くね?」
X・T「アハハ(笑)」
「こどもの日なんか貰える?」
X「昔ならオモチャとか貰えたけど、今はない」
「俺高校生のころ貰ってたけど(笑)」
H「親からですか~?」
「そうそう」
H「今もらってるんですか~?」
「いま貰ってねえよwwwバカにすんなよwwwww」
道中はXちゃんにペースを握られがちだったが、ここで場を笑わせてくれた。
この2人の組み合わせは、意外にピッタリなのかもしれない。
彼女たちとの会話を楽しんでいるうちに、あっという間に5分前となった。
X「ガールズバーいるの?」
「俺JKカフェのために来たから。JKカフェ命だから」
X「アハハ(笑)じゃぁもうお会計?」
「お会計」
X「あーオッケー。じゃぁ明日も来るしかだな」
「いや明日俺八王子にいるわ(笑)」
ガールズバーに切り替わる時間帯となり、店内にはキャストの女の子が増え始める。
そのときには、客は俺たち以外にいなかった。
支払いを終えて店を出ようとすると、全員がカウンター内に立ち並び、「ありがとうございましたー!」と大きな声で送られる。
嬉しい反面、少しばかりの恥ずかしさがあった。
かくして、俺とMさんの『JKカフェ』潜入取材は幕を閉じた。
総括
今回の潜入取材では、とても多くの収穫を得ることができた。
キャストが本物のJK
まず最初に、川越の『JKカフェ』には本物のJKが働いていること。
キャストたちのあどけなさ、10代特有のニュアンスなど、数え上げればきりがないほどの“JK”ぶりが窺えた。
思った以上の低年齢層でもあり、男心をくすぐることは間違いない。
“JK”ブランドの割に料金が安い
そして次に、料金が意外にも良心的なこと。
この店では、女子高生カフェ、ガールズバー共に、時間は40分と少々短い。
どちらも飲み放題付きで、前者のセット料金は2,100円、後者はおよそ500円増しの2,625円である。
「サービス料」という名目で料金に10%加算されるが、それでも1人当たり2,500~3,000円の範囲に納まる。
この料金でJKたちとの会話を楽しめるのなら、かなりリーズナブルと言えるだろう。
客が少ない穴場店
そして最後に、川越のJKカフェは知名度が低いということ。
俺とMさんが入店したのは土曜日の20時半頃、いわゆる「ゴールデンタイム」の時間帯に、客が数人しかいないのは意外だった。
ちなみにJKカフェの後、Mさんと2件のキャバクラを回った。
そこでは、キャバ嬢たちに『JKカフェの存在を知っているか』を尋ねてみた。
以下は、その時の会話を一部抜粋したもの。
「そう言えば、さっきJKカフェに行ってきたよ」
「へー、JKカフェなんてあるの?」
「そうみたい。んで●●歳の娘が働いてたよ(笑)」
「えー!それってヤバくない?」
面白いことに全て(6人)のキャバ嬢たちから、『JKカフェがあるのは知らなかった』という言葉が出てきた。
相対的な調査人数は少ないものの、夜の店の情報に強く、なおかつ地元のキャバ嬢でさえ認識していないことが判明。
一応HPはあるものの、それほど大々的に広告展開をしていないのだろう。
まとめ

酒を嗜みながら、現役女子高生たちとの会話が楽しめる『JKカフェ』
彼女たちと話していると、自身の高校生時代を思い出す。
青春真っ盛り、そんな時期にタイムスリップするような錯覚さえする。
しかし、10代の頃からこのような仕事をしていると、夜の世界から抜け出せなくなってしまいそう…とは余計な老婆心だろうか。
川越のJKカフェは優良店であり、知る人ぞ知る男性たちの癒しの空間として機能していた。