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JKビジネス反対を訴える仁藤夢乃さんの「女子高生の裏社会」を読んで

コラム

シュウジ

当サイト「東京アップデート」の編集長。東京のアンダーグラウンドを攻めてます。

「女子高生の裏社会~「関係性の貧困」に生きる少女たち~」という本を読みました。昨年出版された本なので、JKビジネス壊滅前の時代の話です。

著者はJKビジネス壊滅への片棒を担いた仁藤夢乃さん。メディア露出もあってか最近有名ですね。この人って、JK産業で働く女の子が被害者であり、雇う大人と買う大人が悪い、と痛烈に批判しているんだけど、言ってることがどうも偽善者っぽく聞こえるんだよね。

そんな仁藤さんの最近の活動について思う不満はこちらに書いてます。

今回は、「女子高生の裏社会~「関係性の貧困」に生きる少女たち~」という本の文章を引用しながら、思ったことを書いてきます。

JK産業の入り口に「生活安定層」が来ている

「JK産業」で働く少女は、次の3つの層に分けられる。
①貧困層 貧困状態にあり、生活が困窮している層。
②不安定層 経済的困窮家庭の子ではないが、家庭や学校での関係性や健康・精神状態に不安や特別な事情を抱えている層。
③生活安定層 経済的にも家庭や学校における関係性的にも困窮しておらず、その他特別な事情も抱えていない層。

この1年間で出会った少女の3分の1以上、31名中11名が「家庭や学校に何らかの困難を感じていますか」という質問に「いいえ」と答えた。 彼女たちは、両親や兄弟、教員や友人たちと良い関係を築いている。家では家事を手伝い、学校ではクラスの中心的存在で4年制大学への進学が推薦で決まって いるという子や…(中略)彼女たちはみな明るく純粋で、病んでいなかった。 こうした少女たちが売春や犯罪の入り口に立っていることは衝撃的だった。少なくともこの10年間、「貧困層」や「不安定層」の子どもたちがそちらの世界へ 引っ張られていくのを社会は放置し、容認してきた。その間に、「生活安定層」の子どもたちまでもが入り口に立つようになったのだ。

「貧困層」「不安定層」「生活安定層」の3つのグループ分けは、JK産業で働く子たちにかぎらず、水商売や風俗で働く子たちにも当てはまると思う。

「貧困層」は、母子家庭のため経済的に貧しい子だったり、親に勘当されて家を飛び出してきた家出少女などが多い印象。この層は、ここ最近はあまり見かけていない。

「不安定層」は、学校や家庭などに居場所がないタイプ。その多くは、仲のいい友達がいない、親との関係が悪い、といったケースが多い。不安定層は、多感な思春期にはかなり多く、どことなく闇を抱えた女の子は以外と多い。

「生活安定層」は、「貧困層」や「不安定層」とはタイプがまったく違う。高校でいうならイケイケのグループに属するような子も多く、いわゆるリア充と言われるような子。

「生活安定層」は、自分の居場所がちゃんとあり、昼の世界からも引っ張られるので、まとまった金を稼いだら、スパッと足を洗う子が多い印象。この本の統計だと、JK産業で働いていた女の子の3分の1が「生活安定層」に属していたようだ。

ちなみに、ライト風俗でも「生活安定層」は多い。「手だけいい」「脱がなくていい」などの風俗が増えており、洋服やバックなど、自分の欲しいもののために、軽いアルバイト感覚で始める子が増えている。風俗全般に対するイメージの悪さが、昔に比べ払拭されつつあるのだろうか。

少女を買う大人への教育が必要

日本では、学校教育における性教育やDV防止教育がほぼなされていない。性犯罪や少女への暴行事件が起きるたび、「子どもや女性一人ひとりが、辺りを注意し警戒しながら生活するように」と注意をうながす報道がされるが、子どもや女性側の注意だけで避けられる問題ではない。 子どもや女性が性被害や暴力に遭わないための教育、身を守る方法を教育するだけでなく、男性が加害者にならないための教育や、被害に気付ける人を増やすための教育をしなければならない

この本では、売春する子だけでなく、買う大人も悪い、だから買う大人もきちんと教育をすべきだ、という論調が書かれている。JKに対する性的欲求を、道徳教育でなんとかしよう、という発想はうまくいかないだろう。

性犯罪者の再犯率が高いのは、性欲が食欲や睡眠欲と並ぶ3大欲求の一つと言われるくらい、我々人間にとって必要不可欠な動物的な本能だから。本能を道徳で無理やり抑え込もうとするのは現実的ではない。それは、お腹が空いてもご飯は食べるな、と同じことを言っている。

人は生まれながらにして、JK好きはいないだろう。性癖というのは、成長するにつれ、作られていく。特に思春期の体験は性癖を形成するうえでの大きな要素となる。この形成過程で生活の目の前に存在するのが、JKが中心となっている萌えマンガやアニメなど、JKが特別扱いされている今の社会だ。

もともとJKが性の対象になりやすい社会環境に日本はいるわけで、これを現実的に変えるのが難しいのであれば、JKリフレをはじめとしたJK産業を容認する社会が必要だと思う。

少女たちは「関係性の貧困」に陥っている

家庭や学校に頼れず「関係性の貧困」の中にいる彼女たちに、裏社会は「居場所」や「関係性」も提供する。彼らは少女たちを引き止めるため、店を彼女たちの居場所にしていく。もちろん、少女たちは将来にわたって長く続けられる仕事ではないことを知っているが、働くうちに店に居心地の良さを感じ、そこでの関係や役割に精神的に依存する少女も多い。

この本のサブタイトルにもなっている「関係性の貧困」というキーワードが本の中にもよく出てくる。JK産業で働く子たちは関係性の貧困にいるのだと書いている。

人との関係をきちんと持っている子は精神が安定しているし、子どもを教育するうえでも、衣食住の提供だけでなく、人との関わりを持たせることは重要である。だから、その指摘は、一見すると目の付け所はよいけれど、女の子たち全員が必ずしも「関係性の貧困」にいるわけではない。

親とうまくいっていない、高校に居場所がない、そもそも学校にも行っていない、そんな子たちが「関係性の貧困」に陥っていることが多い。先ほどのグループでいうと「貧困層」「不安定層」がこれにあたり、「生活安定層」は、家族や学校の友達など、しっかりと人とのつながりを持っていることが多く、居場所がちゃんとある。

だからこの問題は、「貧困層」「不安定層」と「生活安定層」を分けて考えなければいけないと思う。

裏社会がセーフティネット

裏社会の大人たちは、おいしい誘い文句で少女を惑わしているのではなく、具体的に彼女たちを支える仕組みを作っている。生活が困窮し、食事や住まい、託児所付きの生活支援をうたう風俗店で働く若年女性が増えていると近頃メディアで報道されるようになったが、女子高生にも同じことが起きている。 家庭や学校に居場所やつながりを失い、セーフティーネットからこぼれ落ちた子どもたちが、彼女たちにとってありがたい条件が揃う店で働いているのだ。

一見、「JK産業」が社会的擁護からもれた子どもたちのセーフティーネットになっているように見えるかもしれないが、少女たちは18歳を超えると次々と水商売や風俗などに斡旋され、いつの間にか抜けられなくなっている。 「JK産業」は系列風俗店への人材を確保するための、教育期間、教育機関のような役割を担っている。

水商売や風俗などの夜の世界の仕事をどう見ているか、で意見が分かれるんだろうか。

この本では、女の子たちが夜の世界から抜けられなくなることを心配しているが、そもそもの大前提に「水商売や風俗で働くことが悪いこと」という差別的ニュアンスを感じる。まずはその偏見を正すべきだと僕は思う。

夜の世界に偏見を持っていない僕からすると、JK産業が社会のレールから踏み外した女の子たちのセーフティネットとして十分に機能していると思うわけ。

18歳を超えて、水商売や風俗に斡旋させられたとしても、そもそも精神的にも肉体的にもずっと続けられる仕事ではないので、時期が来れば辞めるだろうし、また、労働が対価に見合わないと感じれば、自然に辞めていくだろう。

それに、JKブランドの消えた女の子というのは、市場価値が大きく値崩れし、JKの頃にはそこまで必要とされなかったルックスやサービスなどの質が求められる。客が満足できる水準を提供できない女の子は、自然淘汰される厳しい世界である。

だから、夜の世界にいても多くの子が月日とともに自然に抜けるし、長く居続ける子というのは、この世界で覚悟を持ってやっている子である。

最後に

この本は、関係性の貧困に陥っている「貧困層」「不安定層」と、関係性に充実している「生活安定層」をごっちゃにして結論付けている。

仁藤さんの立ち上げたNPO法人は「関係性の貧困」を救うための居場所なんだろうけど、それで本当に救えた女の子がどれほどいるのだろうか。

おこづかい稼ぎやセーフティネットとして機能していたJK産業が、潰れたことによって、返って被害を被っている女の子の方が多いと思うけど。

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