わたしは某性感エステ店に所属しています。
そのお店では、良い意味でも悪い意味でも“素人店”ならではのカオスな実態があります(だからこそ面白いのかもしれませんが)。
今回は、そんな性感エステ店の内情をご紹介します。
生本番、性病、ガチ恋愛…もはやなんでもアリ!?「性感エステ店」のカオスな実態

実態1.本来はあり得ないはずの性病が蔓延!?その理由とは
「性感エステ」は、前半はオイルやベビーパウダーなどを使ったエステマッサージ、後半は手コキによる抜きサービスを受けられる業態です。
基本的にはこれだけなので、性病なんて移るはずがないですよね。
ところがどっこい、わたしの店では性病感染率が驚異的…。
それぞれ症状と時期は違いますが、皆「お客さんに移されたみたい…」と口を揃えて言うのです。
性感エステ店は、指名をして仲良くなるにつれ、嬢との関係性次第では過剰なサービスを受けられる傾向にあります。
中にはしっかりと線を引いて、「これ以上のサービスは絶対にしない」という嬢もいますし、気に入った客なら一見でもある程度は許してしまう嬢もいます。
「性病に感染しない」、「イヤな客には脱がなくてもいい」、「手だけで済ませられる」などの敷居の低さもあり、高スペックなキャストが在籍しやすいのです。
しかも、最初は風俗に偏見や抵抗を持ちながらも、慣れてくるとサービスを自分なりにアレンジしたり、付け加えたりするようになります。
本来なら、例え本番行為をしても、コンドームなどで予防すれば性病は移りません。
フェラチオで移る事もありますが、病気にかかっている性器はニオイがとてつもなくキツかったり、表面上の何らかのトラブル(症状)から判る事がほとんど。
つまりは、ノースキン(生本番)で感染した可能性が極めて高いと言えるのです…。
実態2.プロ意識が低く、キャバ嬢・デリヘル嬢より落ちやすい
性感エステ店という絶妙な立ち位置だからか、お客様と付き合ってこの業界を引退するキャストはとても多いです。
それは、このお仕事の性質にも関係するのでしょう。
性感エステの場合、特にデリヘルなどのように客層が幅広く、男性なら誰もが利用した事のあるサービスとはまだ言い難いのが現状です。
そのために顧客が限定され、利用者もさほど多くはありません。
指名をある程度返さなければ、俗に言う“干される状態”になりがちです。
「干される」とは、出勤しても仕事が入らないという意味で(別称はお茶引き・坊主など)、日銭を稼ぐ風俗嬢にとっては一番避けたい状況です。
そして、性感エステは干されがちな業界でもあります。
新人期間を利用して稼いだ後は、仕事に対する執着が無くなる嬢も少なくありません。
また、お客様にとっても、性感エステ店は『ちょっとエッチなバイト』というイメージが強く、恋愛感情を抱きやすい傾向にあります。
「辞めてくれたら付き合う」などの条件を提示して嬢と良い感じになり、そのまま辞めて行くパターンも多く見てきました。
もし、そこそこ可愛くてエロい彼女を作りたいのなら、性感エステ店は嬢を落とせる確率が高いです。
キャバ嬢が相手だとお金を引っ張られてしまったり、デリヘル嬢の場合は仕事における稼ぎが大きすぎて、なかなか辞める踏ん切りがつかなかったりします。
性感エステは店にもよりますが、連日出勤しているキャストは少なく、プロ意識もそれほど無いため、意外に穴場と言えるのです。
「ちょっとナイわ…」プレイがシラけた、メンズエステ店のお客様の笑える発言
気持ちを完全に通わせる事が難しい風俗嬢だからこそ、雰囲気作りを大切にしなければお値段以下のずさんなプレイになってしまいます。
次はわたしや友人が実際に遭遇した、後日談にすればちょっと笑える、「コレは萎えるよね」というお客様の発言を集めてみました。
ケース1.お仕事なのに、感じちゃってるの?
これはわたしの友人Eが担当した、とある初見客Bの話。
BはとにかくEのタイプだったらしいのだが、彼はメンズエステ店が初めてなのかあまりシステムを理解しておらず、デリヘルのように色々なサービスを要求してきた。
「えー、ここ、そういうお店じゃないからぁ」
そう言って断るものの、数々の女性を口説いてきたであろうその自信に満ちた雰囲気で、Bは切り返してくる。
「ダメ?どうしてもダメかな?」
あまりにしつこいのでEも断り切れず、本番をする流れになってしまったと言う。
事が進むにつれ、Eから吐息が漏れると、Bは言った。
「お仕事なのに、感じちゃってるの?」
一度目はスルーした。
『仕事で働いている風俗嬢を感じさせている…』と思うのは、男性からすれば嬉しいという事を理解しているからだ。
どれだけ下手だったとしても、ある程度喘いだり感じて見せたりするのは、わたしたちにとってはサービスの一環である。
すると、またBは言った。
「感じちゃってるね。お仕事なのに」
二度目はまさかの倒置法である。
笑い出しそうになるのを抑えながら必死にプレイに集中していると、Bはひたすらにこのフレーズを繰り返すのだった。
「お仕事なのに?お仕事なのに?」
「お仕事だよ!なのに、気持ちいいの?」
「お仕事なのに?お仕事なのに?」
極め付けは、腰を振りながら果てる瞬間の「お仕事なのにぃぃぃい!!!」である。
Bはこのセックスの間、「お仕事なのに」を30回ほど連呼したという。
いくらなんでも、しつこ過ぎる。
ケース2.目を見てえええぇええ!!!
これはわたしが実際に接客したお客様の話である。
目が大きく、エキゾチックな…悪く言えば非常にクドい顔立ちのCさん。
例えるならば、お笑い芸人「ペナルティ」のワッキーに似ている。
Cさんはサクサクとプレイに移行していく。
愛撫はどちらかと言えばしつこい。
わたしが少し声を出したり反応すると、執拗にその場所を攻め続ける。
「気持ちいいの?気持ちいいの!?」なんて言いながら…。
わたしが目を閉じて喘いでいると、彼は言った。
「目を見てえぇええ!」
「えっ?」
思わず聞き返してしまった。
どうやら、目を見て喘いで欲しいらしい。
ちょっと照れくさいが、確かにその方が恋人感は出るだろう。
わたしがシッカリと瞳を見ながら喘いでいると、Cさんは満足そうにまたしつこい愛撫を繰り返すのだった。
とはいえ、ずっと目を見るのもなんだかおかしいと思い、再び目を閉じているとまた彼は言った。
「目を見てえええぇええ!!!」
(どんだけ見て欲しいねん)
大阪弁で突っ込みを入れたいぐらいの強調具合である。
結果、Cさんはわたしが目を閉じようとするたびに「目を見てええええぇ!」を繰り返し、そのネットリと絡み付くエキゾチックな視線から外れる事を許さなかった。
とある性感エステ店のお客様、ちょっとイタいエピソード3選

わたしを指名してくれるお客様は非常に若い男性が多い。
お店の多くのキャストがおじ様を中心に指名を返しているので、「これはかなり珍しい」とスタッフにも言われるぐらいである。
その理由は不明なのだが、そもそも写真などで私を選ぶのは、若い年齢の男性が多いようなのだ。
比較的お金に余裕があるおじ様たちに比べ、若い男性はガッツキ具合も半端じゃないし、一回一回が重たい傾向にある。
『まぁ応援してあげようか…』という気持ちでおじ様が指名するのも、『会いたい』、『マジで付き合いたい』と他のモノを削りに削って、若いお客様が指名するのも同じなのだ。
わたしはキャバクラ時代に疲れてしまったので、色恋営業は全くしていない。
デリヘル時代に軽く色を掛けた事はあったのだが、体を触ったり、触られたりするプレイも相まって、精神的に参ってしまった。
そのため、今は“ノン色恋”の省エネモードで営業中だ。
だが、若い男性の場合、初めて本指名を下さる時には、もう既に(嬢のことが)気になっていたり、恋に落ちているお客様が多いのも現状である…。
そんなわたしとお客様の間で実際にあった、面白おかしい、そして痛いやり取りを紹介しよう。
ある程度ボカしているので、その点はご了承頂きたい。
ケース1.「ウソじゃないよね?」本名にこだわるお客様
本名を聞かれた際の出来事である。
わたしをはじめ、風俗嬢からすれば、本名を知りたがる意味があまり分からない。
源氏名が不自然な場合は、下の名前の愛称ぐらいなら教えることもあるだろう。
プレイ中に本名で呼び、ラブラブ感を味わいたいお客様も多いからだ。
だが、フルネームは完全な個人情報である。
中には、ググればプライベートな情報まで分かってしまう事も多い。
そのため、わたしは苗字のみを微妙に変えて教えることにしている。
ウソにしろホントにしろ、疑う気持ちをグッと堪えてとりあえず相槌を打っておけばいいのに、深追いする男性は存在する。
中には、「本名ウソじゃないよね?」、「仲良くなってからウソだって分かったら一発で信用失うけどそれでもいい?」、「今なら俺も理解するよ?」などと彼氏面をしてきたお客様もいた。
コレにはさすがにイラついてしまった。
色を掛けたり、何か特別な関係だったら別だが、お店でしか会っていないのにこの言い方はないだろう。
仮に良い感情を持っていたとしても、キャストを脅すような言い方はよろしくない。
言い回しの大切さを痛感した出来事だった。
ケース2.「キレイだよ」少女マンガのようなアクションをするお客様
初めてお会いしたお客様との出来事である。
抜きの時間中、わたしの顔を両手で包みこんで、「キレイだよ」、「好きだよ」などと甘い声で囁いてくる男性がいた。
恋人プレイの一環なのだろうが、正直戸惑ってしまった…。
キャストが喜ぶと思っているのだろうか。
それとも、少女マンガにありがちな、優しくてちょっぴりキザな彼氏とのエッチシーンを再現したいのだろうか。
わたしはまず引かないのだが、これには少々驚いた。
その場ではちゃんとリアクションをして反応したものの、初対面でコレはちょっとキツい。
恋人プレイが好きなのかもしれないし、その気持ちは充分に分かるのだが…真顔でされると初対面の嬢は少し驚いてしまう。
いっそのこと、プレイ時間や抜きの時間が始まる前に、「やってみたかったプレイしてもいい?」などと前フリをしておいたほうが良い。
言うが勝ちである。
ケース3.「俺はお前だけのもの」勘違いが激し過ぎるお客様
とにかく、勘違いが激しい人だった。
お客様の外見を客観的に評価するのは恐れ多いが、「女性にモテて、既婚になってからも何人かセフレがいた」などと言う方の容姿レベルは残念ながらとても低い。
「エッチの時だけでいいからわたしを一番にして…」なんて、大好きな元彼にすら言ったことないぞ。
そんな風に、女性から情熱的に迫られた数々の経験をお持ちのそのお客様は、冗談のように甘いセリフを色々と囁いてくるのだった。
「でもこの瞬間は、俺はお前だけのもの」
「確かに出会いはこんな店だけど…もうお互いに違うなって思ってんだろ?」
「俺以外の男の前ではきっと、胸触られただけでそんな声出さないよね」
「分かってるよ。特別だなんて言わなくていい。もう感じてるから」
…独身ならともかく、子持ちの既婚者である。
携帯の待ち受け画面は、子供の入学式の正装姿の写真だ。
日常を忘れて、エッチなお店で自分の理想の男性を演じたかったのかもしれない。
それにしても、彼から抜きの時間中に掛けられた言葉は、どれも破壊力とインパクトが物凄かった。
性感エステ嬢の憂鬱「体を許してしまった常連客」
『二度あることは三度ある』
そんな諺が古くからある。
だが、常識が通用しない世間の片隅の風俗界では、「二度あることは三度あると思うことなかれ」と、現役嬢の立場からぜひとも主張させて頂きたい。
極めて大人しい、紳士な常連客
延べ10年ほど、かなりのペースで性感エステ店に通っているというその男性。
受付でそのように聞き、『どんな風俗好きで変態なお客様が来るのか』と内心ヒヤヒヤしながらドアを開けた。
(…えっ?あれっ?)
そこには、拍子抜けするぐらい爽やかで素敵な男性が立っていたのだ。
清潔感もあり、精悍(せいかん)な感じで、イケメンカテゴリーに入る男性だった。
受付で聞いた話とはまるで正反対の印象である。
少し戸惑いつつも、自己紹介を始める。
「初めまして、みうです!よろしくお願いします」
「よろしく。じゃ、早速だけどシャワー浴びてくるね」
無駄はないが、冷たい感じもしない。
第一印象は良かった。
シャワーを浴びてからも、風俗慣れしているような印象は全く受けない。
少し人見知りだと言う彼ではあったが、割と話が盛り上がり、彼自身も満足しているようだった。
あえて特筆すべきは、非常にイキにくかった事だろうか。
性感エステのサービスに慣れ切ってしまっているのかもしれない。
「女の子とか得意じゃないから、いきなり来て『エッチなことして下さい』って言われても出来ないんだ」
その言葉に納得してしまうほどに、彼は極めて大人しいお客様だった。
えっ、本当にいいの?ありがとう!
彼はいつも笑顔でわたしを出迎えてくれた。
時にはお菓子なども用意して、嬉しそうにわたしを待っていてくれる。
連絡先を一応交換したのだが、無駄にわたしを遊びに誘ってきたりする事もなく、とても楽なお客様だった。
だが…やはりイキにくい。
なかなかイカせることが出来ない。
ここまで苦労するのは久しぶりだった。
性感エステ店に来る客は概して早漏が多い。
そうでもなければ、手コキでフィニッシュを迎える店で満足することは難しいからだ。
初めて来店する客が『合わない』と感じたら、早々に来なくなるケースがままある。
そして何度目かの指名のとき、ついにわたしは一線を越えてしまう。
体を許してしまったのだ…。
「えっ、本当にいいの?ありがとう!」
嬉しそうにわたしを抱きしめる彼。
生理的に無理なタイプでもなく、彼との時間も苦痛ではなかった。
と、その時はそう思っていた。
いいお客様だった。
連絡先を交換しても、店外デートに誘ってくることはない。
必要最低限の連絡。
だが、わたしは徐々に彼との時間が苦痛になっていった…。
「今日も、いい…よね?」
上目使いで聞いてくる。
許可を求めてはいるものの、手には開封されたコンドームが握られていた。
もうその気なのだ。
わたしの意思は無視して、とりあえず聞いているだけという印象だった。
それがあったのも最初の数回。
いずれその言葉もなくなり、当然のように彼はマッサージ時間を毎回スキップするようになる。
しかも、自分がギンギンに勃った時点ですぐ挿入したがるのだ。
当然、わたしはまだ乾いたままである…。
なんなのこの独りよがりなセックス…
わたしはだんだんと苛立ち始めた。
乾いたまま挿入されれば、当然痛い。
攻めるのが億劫なのだろうか。
だが、男性とて女性が感じていなければ決して気持ち良くはないはずだ。
精神的にもそうだし、肉体的にもそうだろう。
あまりに一方的で、形だけのセックスだった。
しかし、彼の不思議な点は、それが「面倒くささ」によるものからでもなさそうなことだ。
面倒で前戯を省く男性は、なんとなく態度で分かるもの。
そのような素振りはないのだ。
でも、こんなセックスで気持ち良いのだろうか。
白け切っているものの、一応仕事のことが頭にあるわたしは演技で一通り喘ぐ。
彼は勝手に挿入して、勝手に動いて、毎度勝手に果てる。
なんだか、彼にウンザリし始めた。
(優しそうで大人しそうに見えるけど、考えてみれば会話も自分の話ばかりだったな…)
次第にわたしは、『予約したよ』との連絡に、『体調が悪いから…』などと返信するようになった。
あるときは風邪、あるときは本当にズル休みをし、彼のセックスから逃げようとした。
しかし、なんだかんだで彼とは絶対セックスする羽目になってしまう。
こちらが拒否しても、やはり勝手に挿入してくるからだ。
わたしと彼の奇妙な攻防戦は続いた。
『今日出勤したいけど…体調悪くてデキないかも。だから、今日はキャンセルしてくれないかな?』
『体調悪いんだね。わかったよ。逆に心配だから、行くね』
その日、彼は風邪薬と、やっぱりセックスもくれたのだった。
だんだんとわたしは自分にも彼にも嫌気が差し始めた。
どうしてこんな独りよがりなセックスをしているのだろう。
彼とわたしの距離感は、セックスをすればするほど開いていった。
わたしはやっぱり体を売れない
ある日の事である。
超常連の彼には助けられていたことも多かったのだが、わたしはひとつの決心をした。
(彼を切ろう)
彼とわたしの関係は微妙だった。
セックスフレンドのように割り切った雰囲気もないが、他の色客のように熱心に口説いてくるわけでもない。
結局、よく分からない関係だった。
『ごめん。わたし、もうセックスしたくない…。さようなら』
たったそれだけ。
たったその一行だけをメールで送り、すぐにアドレスを着信拒否した。
彼とのたくさんのやり取りがメールボックスに保管されている。
スクロールせずとも、画面は埋まっていた。
わたしはもともと、客とは連絡を取らないタイプだった。
返事を見るのは怖かった。
だから、着信拒否した。
反応を知りたくなかった。
嫌いじゃない。
でも、決して好きでもない。
何もない関係だからこそ、苦しくなった。
デリヘルでナンバーを取っておいて言うことでもないが、わたしはやっぱり体を売れない。
こんな虚しさを背負う事には耐え切れないのだ…。
なくならないものに見えるからこそ、もっと高く売りたくなる。
なくならないものだからこそ、もっともっとが止まらない。
弱いわたしは、そのままでは欲の無限ループに陥って、スルスルと堕ちてしまいそうだった。
私達を腐らせていくもの
体を売っている女は、やけにつっけんどんであったり、マニュアル的な“地雷女”も多い…。
そう思うかもしれない。
世間一般でも、風俗嬢はやはり『擦れた女』の烙印を押されてしまっているようだ。
しかし、必ずしもそうではない気がする。
きっと、虚しさや寂しさが彼女たちを腐らせていくのだと思う。
それに見合った対価として、自分で折り合いと体の値段を付けているのだから…「自業自得」の四語で済まされる以外の何物でもない事も、重々わかってはいるのだが。
「性感マッサージ店」に依存してしまった卑屈すぎる常連客

「なぁ、俺のどこが悪かったんだよう。教えてくれよう」
受話器越しに、男性の泣きそうな声が響いていた。
受付で今日の給料を清算しようとしていたわたしは、ギョッと立ち止まる。
店長は困惑した様子でうんうん、としきりに頷いていた。
『ちょっと待ってて』
わたしに目配せをしてくる。
「いや、Bさん、悪かったとかそういうわけじゃなくて…たまたま女の子がちょっと入れなかっただけなんですよ…」
「うそだぁ。違うだろぉ。今までこんな事なかったんだ」
「いえいえ、そうは言われましてもね…ちょっと僕仕事があるんで、もうこの辺でいいですか?失礼します」
店長はそう言って強引に電話を切った。
ただならぬその様子を見て気になったわたしは、店長に尋ねてみる。
何もそこまで卑屈になる事はないのに…
「何があったんですか?」
「…いや、常連のBさんなんだけどね…さっきの電話」
Bさんはかなりの常連で、ハイペースで店に通い詰めていることは知っていた。
店の近くのホテル街で何度か見かけたこともあるからだ。
「Bさんって、ほら、独特な人だろ?指名もしないから、女の子もぐるぐるフリーで回してたんだけどさ。前々から評判が良くなくて。ある女の子から、本格的にクレームってか、本人に直接ダメ出しみたいなのを言ったみたいなんだよね」
そういえば、店長とAちゃんが何か話し込んでいたのを見たような…。
Aちゃんは珍しく少し苛立っている様子だった。
「普通にしてればいいのに、普通にできないから嫌われるって当たり前のことなのに。なんでそれを『俺がオジサンだから』とか『カッコ良くないから』とか、そういう理由にするのかわかんない」と言っていた。
実はわたしもBさんを接客したことがある。
エステがメインである性感マッサージにも関わらず、いきなり全裸でAVを大音量で流し始めたのだ。
そして、女の子がドアをノックして入ってきても、「勝手に入って」と言うだけでこちらを見ようともしない。
さっさとシャワーを浴びて、まずマッサージを開始。
確かに、彼の話しぶりや行動のひとつひとつにはすごく癖があった。
「俺ってオジサンだからさ」
「オジサンの相手するの嫌でしょ?」
…そういった自虐ネタがひっきりなしに出てくるのだ。
「俺のチンコ汚いでしょ?こんなん触りたくないでしょ?」
…何もそこまで卑屈になる事はないのに…。
彼の極度な不安がそうさせるらしいので、わたしは無難な接客をし、そこそこ仲良くなれていたお客様だった。
だが、なんとなく感じていたのだ。
彼はとっても不安で自信がない人なのだと。
例え1回指名をしたとしても、女の子に本当は好かれているのか嫌われているのかが不安になってしまう。
そして、入れ込めば入れ込むほど、それが不安になってどうしようもなくなってしまう人なのだろう…と。
人との距離感の縮め方がすごくすごく下手なのだ。
ここまで極端な人は初めてだった。
「女の子に好かれないような態度や行動しかできないから、いつもフリーで入ってるし、回せる女の子がいなくなるんだよね。それ言ったら、さっきみたいな感じになっちゃってさ。もうさっきからずっと、『どこがおかしかったのか』、『謝るから』ってうるさいんだよ」
「…うわぁ」
すごい依存具合だ。
きっと、Bさんは女の子にも依存できないから店に依存したのだろう。
女の子は、いくら仕事とはいえ感情がある。
好かれたり嫌われたりする事が、きっとBさんには堪えられないのだ。
でも、店なら彼を拒むことはない。
そうしてBさんは店に通い続けて、店に依存していったのだ。
ひとりのはけ口
Bさんはすごく寂しい人だった。
何かぽっかり穴が開いてしまっているような、そんな人だった。
彼はきっと、それをずっと埋めることができていない。
多分それは「人と関わりたい欲」とでも言うような、そんなものだ。
彼には生身の人間との心が通った付き合いが必要で、それが欲しいけれど、人の気持ちに敏感すぎるゆえに誰とも心を通わせられない。
だから、わざと嫌われるような行動や言動をして、嫌われるように仕向けているのだ。
そうでないと、自分の周りに人がいない事を納得できないから。
そうして、依存できるものへズルズルと流れて行ったBさんが見つけたのが、たまたまここの性感マッサージ店だったのだろう。
他の何かでも良かったのだと思う。
例えば、キャバクラとか、ガールズバーとか。
でも、もう彼にとってはここの店が全てなのだ。
ひとりのはけ口をこの店で埋めようとしてしまったのだから…。
Bさんは今後どうするのだろう。
ぼんやりと思う。
接客したとき、卑屈ながらも相手を探るような態度を取っていたBさん。
人と関わるのがすごく下手で、それでも人に好かれたくて、性感マッサージをよりどころにしてしまったBさん。
いつか彼の棘がなくなって、“普通”の女の子や人間関係でその溝を埋められるようになることを願う…いや、願うほどの関係は彼との間にはない。
そうなったら、いいね。
他人事のようにそう思うのだった。
【番外編】「こんな美少女が俺なんかに…」とある性感エステ店の“基盤キャスト”、驚きの正体

これは数年前、わたしのお客様がとある性感エステ店で実際に遭遇したキャストの話である。
珍しいパターンなので、もしかしたら特定されるリスクがあるかもしれないが、了解は取ったため、ある程度ボカしながら書くことをお許し頂きたい。
これは、当たり嬢だぞ…
『コンコン』
「はじめましてっ」
ドアを開いてやって来たのは、小柄で細くタレ目が可愛らしいキャストだった。
「美少女」と言って差し支えない。
ストレートの茶髪がよく似合う。
(これは、当たり嬢だぞ…)
それがMさんの第一印象だった。
風俗にいる女性にしては清楚な感じがするし、化粧もナチュラルメイク。
これからの展開を考えると、Mさんは純粋にワクワクした。
ここでMさんのスペックを述べておこう。
Mさんは40代中盤、顔は濃い目で、ダンディな雰囲気が漂う大人な男性である。
若い女性からも好かれそうな渋さと落ち着きを兼ね備えている方だ。
それがあんな結果を招くとは…この時、露ほども思っていなかっただろう。
Aと名乗るキャストは、Mさんの服を丁寧に脱がせた後、シャワーを浴びるように促した。
ここまではマニュアル通りである。
エステ店のお客様は、1人でシャワーを浴びるのが常識なのだ。
シャワールームから出ると、なんとAは全裸で待機していた。
あどけない体つきが、その筋の男性にはたまらないだろう。
「えっ…Aちゃん、服は?」
「イヤですか?」
ジッとこちらを見つめてAが聞いてくるので、Mさんは嫌とも言えずベッドに横になる。
話の流れから、彼女は今日が初めての体験入店であることを知った。
そして、Mさんは3人目のお客様とのこと。
そう話している際にも、Aの湿った部分が体に当たる。
エロい。
確かにエロいのだが…少々見た目とのギャップが過ぎる積極性に引いてしまうのだった。
この子は何が目的なんだろう。裏があるんじゃ…
「Aちゃんさ、みんなにこうしてるの?男の人、勘違いしちゃうからやめた方がいいよ。襲われちゃうよ…」
「……くて」
Aが何かを小声で言った。
「え、なに?」
「してほしくて…」
驚いた。
この店の常連と言えるほど来店していないが、他にも数人のキャストに付いたことがある。
だが、こんなキャストは初めてだった。
(何か裏があるんじゃ…)
馴染みにしている店とはいえ、体験入店だと言う彼女の行動に不安になる。
「Aちゃん、ここエステ店だし、俺は他に払えるお金なんて持ってないよ。ちゃんとサービス通りにしてくれれば満足だから…」
「ちがうんです。そういうのじゃなくて…」
Aの可愛らしい顔が目前に迫ってくる。
半ば強引にキスをされた。
「イヤ?」
「…イヤじゃないけど…」
こんなキャストもいるものなのかと、驚きの気持ちで一杯になる。
(性病を持ってたらどうしよう…)
一応ゴムを着け、Aのなすがままにセックスをする。
特別にエロいとかそんな印象はない、至って普通のセックス。
痴女というわけでもなく、ユルマンなわけでもない。
そこがますます不思議に思えた。
歳を聞くと、19歳だと言う。
(こんな若くて可愛い子が俺なんかに…)
Mさんは疑心暗鬼に陥っていた。
「気持ち良かった…」
Aが抱き付いてくる。
サラサラな指通りの良い髪を撫でると、まるで恋人同士のような感覚を味わった。
こういう営業スタイルなのだろうか。
確かに可愛いし、本番もできたし、セックス自体も悪くはない。
でも、なんだか引っ掛かる…。
(もう指名することは無いな)
Mさんはぼんやりと思っていた。
そんなMさんとは裏腹に、Aはとても人懐っこい。
「アドレス聞きたいです。ダメですか?」
「え…」
(この子は何が目的なんだろう)
いよいよ怪しく思って丁重にお断りすると、Aは本当に落ち込んだような表情を見せた。
その表情がいたたまれず、Mさんは慌てて付け加える。
「次来るから、その時は教えるからね」
この言葉が次の悲劇を招いてしまうのだ。
会いに来てくれたの!?きゃー、うれしい!
数週間経ってからの事。
なんとなくまたエステ店へ行きたい気分になり、嬢を探すためにHPをチェックすると、あのAが出勤リストにいることに気付いた。
もちろん、指名する気はない。
お目当ての他の嬢を決め、受付をするべくビルに向かう。
この店は「受付型」である。
料金は前払い制、来店してから店員にお金を払うことになっている。
Mさんはいつも通りエレベーターで受付に向かおうとした…その時。
「あっ!お兄さんお兄さん!」
声の主は、なんとAだった。
変わらない様子で嬉しそうにこちらに向かって来る。
「会いに来てくれたの!?きゃー、うれしい!ずーっと待ってた!」
Aは嬉しそうにMさんの腕にまとわり付いてきた。
「いや、違うよ」と言うほどの冷たさは持ち合わせていない。
そのまま半ば無理やり引っ張られてしまい、二度目もAを指名する事になってしまったのだった。
「ずっと会いたかった…」
シャワーを浴び終わると、またもやAは全裸で待っていた。
そして抱き付いてくる。
一般的に見れば美少女の類だ。
確かに、悪い気はしなかった。
が…流れでした二度目のセックスも、Mさんにとってはただの性欲処理にすら満たないものだった。
せっかく抜きに来た割には、満足感が薄い。
Aのやたらと人懐っこい様子がそうさせるのだろうか。
ただ、本当に自分がタイプで、これほどガツガツと接客してくれたとは素直に思えなかった。
淫乱というわけでもなさそうだ。
一体、何が目的なのだろう…。
「ねっ。約束だよね。連絡先教えて」
そう言うと、AはMさんの携帯を操作し始める。
いつの間にか、勝手に自分の携帯へ空メールを送信されていた。
(まぁ、連絡先だけだし…)
軽い気持ちで考えていたMさんだったが、Aとの関係はそれでは終わらなかった。
僕は君の彼氏にはなれない。さようなら
Aは依存癖があるらしい。
ひっきりなしに携帯が鳴る。
仕事前、仕事終わりは当たり前、朝のあいさつや夜のお休みまで、一通も返さなくてもどんどんメールを送ってきた。
あまり返事をしないことが続くと、絵文字だけのメールが送られてくる。
典型的な構ってちゃんだった。
好意を持っている相手がそんな風に絡んでくるなら可愛いものだが、Aの場合は度が過ぎている。
彼女の連絡はエスカレートしていく一方だった。
「疲れる…」
携帯を見るのが憂鬱になったある日、Mさんは思い切って『僕は君の彼氏にはなれない。好きじゃないから。さようなら。』と冷たく書いたメールを送って着信拒否をすることにした。
これで全てが終わった…はずだった。
またまたAと再会したのはその数週間後だった。
(これで気兼ねなく店に行ける)
Mさんは再び受付に向かった。
もはや顔馴染みになった店員とやり取りをし、ホテルを決めるべく下に降りようとした時である…。
Aがエレベーター前にやって来たのだ…。
恐怖の瞬間だった。
どうやら、受付の声を盗み聞きしていたらしい(待機場所が店のすぐ近くにあるという構造上、仕方ないのかもしれないが)。
(どんな地獄耳だよ…)
向かって来たAは、「怒る」と言うよりはすごく悲しそうな表情をしていた。
怒っているのなら店にクレームを付けることもできるが、今にも泣きそうな顔をしているのでどうも反応しづらい。
「どうして…なんで嫌いになっちゃったの…」
か細い声でAは言う。
Mさんはとっさに言い返せない。
「…いや、嫌いになったっていうか…」
「なんでお店に来ても指名してくれないの?そんなイヤになった?」
(なんなんだコイツは…粘着質なのか?)
「着信拒否したでしょ?」
「うん…まぁしたけど…」
その時、エレベーターのドアが開いた。神の救いに思えて、とっさに滑り込む。
と、Aも脚を入れて乗り込もうとしてきた。
だが、タイミングがすれ違ったらしく、間一髪逃れられたのだった…。
MさんとAの別れ
(Aがいる間はこの店を利用するのはやめよう)
そう心に誓ったMさんだったが、ネットで調べてみても他のキャストに聞いてみても、特に悪い話は聞かない。
むしろ、ぼちぼち人気のあるキャストのようだった。
確かにメンヘラっぽいキャストではあったから、「本当に好かれちゃって、どうやって距離を縮めたらいいのか分からなかったのかもね」なんて笑われる始末である。
運が悪いというのか、なんとも言えない後味の出来事だったそうだ。
まとめ

今回は私が働いている性感エステでの出来事を紹介した。
面白おかしく、少し表現を変えてネタにさせて頂いたのだが、安心してほしい。
よほどの“痛客”でない限り、嬢の間であなたのプレイ内容が細やかに話される事はない。
「よほどの痛客」とは、キャストに精神的・肉体的な攻撃を加えてくるお客様の事である。
馬乗りになったり、本番強要をしつこく迫るなどだ。
そうでない限り、まず嬢はネタにすらしない。
そういうお仕事なのだから。
風俗店は自分の願望を叶える場所。
理想の自分を演じながらプレイをしてみるのも、そんな遊びのうちである。